恋 文 日 和
もうあたしの頭には
真っ白の仮面を被ってオノを持った男の姿しか浮かばない。
そんな時
「きゃあっっ!!」
木陰からガサっと音がしてあたしの心臓が跳ね上がった。
「き、菊、」
「やだやだやだ!!」
もうやだーっっっ!!!!
何でこんな事になっちゃたの!?
玲のバカーっっ!!
「菊井ってば!!」
パニックに陥ったあたしの耳元で声がする。
はっと意識が引き戻されて、顔を上げると
「大丈夫だって。ただの野ウサギだから。」
そう言って神楽くんが指差した先には、真っ白のウサギ。
あたしの叫び声に驚いたのか、そのウサギはそそくさと森の中に消えてしまった。
「…な、なんだぁ…。」
ビックリしたぁ…。
ずるっと力が抜けて座り込むあたし。
そしてふいに
頭上から聞こえた笑い声。
「ぶっ、菊井ビビりすぎ!」
「え?あは、あはは……。」
誤魔化すように笑うと
あはは、と暗闇に響く神楽くんの声が
ようやくあたしの恐怖を取り除いてくれた。
そして――――……