恋 文 日 和
携帯を振って電波を探す神楽くんと、足もとの小石を蹴ってそんな事をぼんやりと考えるあたし。
いつか、あたしの小さな恋心を
神楽くんに伝えられる時がくるのかな。
繋いだこの手のひらみたいに
想いが重なる日が、訪れるのかな。
その時、あたしは今よりも少しは成長出来てるのかな。
繋いだ手に、気が付かれない程の僅かな力を入れた瞬間
「あっ!!」
と、静寂に響いた神楽くんの声。
そのまま視線を上げて神楽くんの目線の先を追うと
「今、あの辺光った。」
そう言った神楽くんが、突然あたしの手を引いて歩き出した。
混乱した思考を回転させて、暗闇をどんどん進む後ろ姿に問いかける。
「ど、どこ行くの?」
「あそこ、ほら!今光った!」
「え?」
小走りになりながら、必死で神楽くんが指差した先に目を凝らす。
そして、辿り着いた先にあたし達を待っていたのは
「…すげー…。」
「……嘘、」
河原で儚い命を懸命に灯す、幾千ものホタルだった。