月が満ちるまで
空が暗くなってきた。藍色が深くなって、太陽のオレンジ色との対比がきれいだ。
浮かんだ雲にあたる光と空。
いくら見ても飽きない。
家に帰りつくと、母さんの車が車庫にあった。
「ただいま」
「お帰り。味付けサンキュー」
スリッパを突っかけてキッチンに顔を出す。
上着を脱いでエプロンをかけた母さんが、腕まくりしてレタスをちぎっていた。
冷蔵庫からスポーツドリンクを出してグラスにつぐ。一杯飲み干してから、二杯目を持ってテーブルにつく。
「唐揚げ、ネギだれにして」
「えーっじゃあ揚げてる間に作ってよ」
「めんどくさがらないでよ」
「めんどくさい。大人になればわかるわよ」
ふふふっと笑う。
その様子はいたずらっぽくて、若く見えた。
短いほうが楽だからと、短くしている髪からピアスがのぞく。
よそのウチと比べても若く見える。
気持ちも若いんだろう。
いつまでも好奇心があって茶目っ気がある。
「お父さんがもうすぐ帰ってくるから、一緒に食べよ」
ネギを刻みながら見ると、携帯を閉じる所だった。
母さんは、なるべく家族で食事をしたがる。食べたくなくても、顔はだしなよ、そう言われる。
何か食べるところを見ると安心するらしい。
人間、食べれなくなったらダメだ
家族で同じ物を食べるのが大事なんだと
食べるのは大好きなくせに、ちょっとめんどくさがり。
今週は忙しかったから、こった料理はまた、いつか。