月が満ちるまで
この学校、一応進学校なので文化祭は夏休み明けの9月になる。
夏休みに準備期間を置いて文化祭となるので、打ち合わせも早めに始めて煮詰めることになる。
今回は内輪の会議。
部活やクラスごとの会費の割り振りや、今年のテーマを検討する。
主に前回のおさらいだ。
「小林、なにか案件あるの」
「…まあねぇ」
歯切れが悪い。
「なに、今になって足がすくんだ」
笑って言ったら図星だったらしく、肩をすくめた。
「本当は、裏方でいいんだ。頑張ってる人を応援するのっていいじゃない。なんだかワクワクして、こっちまで元気になって」
なんでもテキパキこなす小林の言葉とは思えない。
「じゃ、小林が楽しめることすればいいじゃない。みんなで楽しめるのをさ」
メガネの下の目が大きくなる。
「かなわないなぁ、金井くんには」
満面の笑顔。
「ケッコー勇気づけられてるよ」
よしっと気合いを入れて歩きだす。
後ろ姿を見ながら、変わった女だなぁなんて思った。