月が満ちるまで

この学校、一応進学校なので文化祭は夏休み明けの9月になる。

夏休みに準備期間を置いて文化祭となるので、打ち合わせも早めに始めて煮詰めることになる。

今回は内輪の会議。

部活やクラスごとの会費の割り振りや、今年のテーマを検討する。

主に前回のおさらいだ。



「小林、なにか案件あるの」

「…まあねぇ」

歯切れが悪い。

「なに、今になって足がすくんだ」

笑って言ったら図星だったらしく、肩をすくめた。

「本当は、裏方でいいんだ。頑張ってる人を応援するのっていいじゃない。なんだかワクワクして、こっちまで元気になって」

なんでもテキパキこなす小林の言葉とは思えない。

「じゃ、小林が楽しめることすればいいじゃない。みんなで楽しめるのをさ」

メガネの下の目が大きくなる。


「かなわないなぁ、金井くんには」

満面の笑顔。

「ケッコー勇気づけられてるよ」



よしっと気合いを入れて歩きだす。

後ろ姿を見ながら、変わった女だなぁなんて思った。


< 22 / 40 >

この作品をシェア

pagetop