月が満ちるまで
「じゃ、解散ってことでいいかな」
高藤先輩は一同を見渡して言った。
カタカタと椅子がなり、それぞれが帰ることになる。
小林はマグカップをかたしていた。なんとなく手伝いながら、高藤先輩をうかがってしまう。
「どうする気」
「どうするって」
「はっきりしないなぁ。何かしたいんでしょ、文化祭で」
マグカップを渡しながら顔を覗き込む。ちょっと眉が寄って、困ったような顔になる。
「……ちょっと考えてる。制服を変えましょう!署名運動しましょう……そんな風じゃなくて、こっちも、むこうもみんなで参加して楽しみたいよね」
ぎゅっと握るスポンジから真っ白な泡がしたたる。
「ミスコンでなんかできないかな」
「制服審査も入るの」
「そう。どんな制服がかわいいか。他の学校の制服の人気投票もいいな」
「さっき、言ってみたらよかったのに」
「…まだ考えがまとまらなかったから。」
小林の洗ったマグカップをすすいで洗いかごに置いていく。
「オレも高藤先輩もいるから、一人で悩むより相談しなよ」
「でた。オレ」
「えっ」
「ふふっ滅多にないんだけど、オレって言ったでしょ。それが出ると本音だって気がする。相談に乗ってくれてありがとう」
意識してないことを言われて照れる。オレねぇ…
「いつでも言いなよ。一人で出来ることじゃないから」
なにげなく先輩をみたら、きれいなウインクをした。にや、という感じに笑われた。