月が満ちるまで
風待ち
春にはレクリエーションとして校外ホームルームがある。
「これって遠足だろ」
ハルがつぶやく。
「そうとしか思えないな」
しかし現地集合、現地解散で自由行動ってどういうこと。
あまりに放任すぎ。
集合場所には私服の奴らが数人づつのグループを作っていた。
ちらちらと確認してしまう。彼女の姿がないか。
みんなが参加するから、彼女も参加すると言っていた。
期待している。
学校以外で会えることに。私服の彼女はどうだろう。
バカだと思う。
どうして彼女でないといけないのか。
彼女は難しい相手だ。
理解することも難しい。分かりたいと思って、分かったと思っても…
それが正しいとは限らない。
それでも俺は彼女がいい。どうしてか分からない。こういうのが惚れてると言うんだろう。
「お」
ハルの言葉に駅を見る。到着した電車から流れてくる人の波。
すぐに見つけられた。
Tシャツに裾の広がったチュニックを重ねて、ハーフパンツを合わせている。
涼しげなブルーだ。
この涼しい軽井沢が、爽やかになった。
バカなことを言ってる。でも、彼女は初めて見た時みたいに、佇まいが涼しげだった。
さわさわと草原を渡ってくる風のように爽やかさがあった。
ぼんやり眺めてしまった。