月が満ちるまで

「お前、なにやらかしたんだ」


苦い顔のハルにそう言われても、わからなかった。


「なにかできるほどの度胸なんてないよ」

「お前さ、金井先輩から目ぇつけられてるってよ」


金井先輩…




誰だかとっさに出てこない。そんな人にどうやって目をつけられたりしたんだ。


「ほら、これ」


渡されたのは薄い冊子で、生徒会監修の部活案内だった。

まくって見ようとして、表紙に吸い寄せられた。


女の子が微笑んでいる


俺の好きな子だ。



黒目がちな目の感じも、髪の感じもそっくりだ。

……署名 S,KANAI


こんなのを描くくらいだから、公認なんだろう


……金井先輩の彼女だったんだ………



「俺、お前のこと聞かれたんだよ…知らないって言っといた」


「わりぃ」


なんだ、これ。告白とかもないままで失恋決定みたいだな。

ため息しか出てこない。






「で…いつから気がついてたんだよ」


「最初からかもな」


「最初…いつ」


にやっとハルが笑う


「入学式から。お前、バレバレだって」


嘘だろ…


「俺ら、付き合い長いからな」


そう言って、胸に拳を入れる。


「気をつけろよ。よくは知らないけど先輩なんだから」


「まったくだ」


だからといって、急に気持ちがなくなる訳じゃない。



好きなのはかわらない



片思いだっていい



好きだから


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