私はあなたが大好きでした………………。
「おい、」

不意に秀弥に声をかけられた。

どうやらコーヒーを継ぎ足すために立ち上がってキッチンにいるようだ。

「なに?」

「気持ち悪いからその顔やめろ。」

「その顔ってね、何年この顔で生きてると思ってんのよ。」


「しらん」

夫婦になっても俺様や毒舌の取れない彼。

それはそれで好きだったりするのはおかしいだろうか。

「明日、結婚記念日だな。ドコか行くか?
それとも、家ですごすか?」

こういった事を女の私よりもまめに言ってくるのは感心する。

今だに付き合った記念日とかもやっている

バカップルだ。

「家がいいな」

もちろんバカップルなんて言うと何か言われかねないので黙ってはいる。

「わかった、できるだけ早く帰ってくる」

彼は妻に毒舌で俺様だと、会社で有名だ。

けれど毒舌で俺様のくせに愛妻家だとも有名らしい。

たしかに、愛されてるとは思う。

普段あまりそう言った類の言葉を口にすることはないが、ちょっとした行動なんかが
愛されてると実感させてくれる。

「わかった!いっぱい料理して待ってるね」

私が張り切ると

「あぁ。まずいものだけは勘弁してくれよ」

彼はにこりともせずそういうのだ。

けれど私は、知っている。

私がどんなにまずいものを作っても

「何でこんなに食材の味を完璧に殺せるのか逆に不思議だ。」

と言いながらも結局は全て食べてくれるのだ。

こんなに素敵な旦那はいないと思ってる私は、やはりバカップルなのかもしれない。

コーヒーをつぎなおしリビングに戻ってくる彼。

今度はテーブルではなく私の座るソファーに座って私の肩に頭を預ける。

彼の癖だ。

落ち着くらしい。

「はぁぁ。」

「コーヒー溢れるよ」

「お前じゃないから大丈夫だ」

と、まるで私がこぼしているようではないか。

「どうしたの?」

彼がこの癖を出すときは基本的に甘えたい時だ。

彼はコーヒーをおいて私に頭を預けたまま

「幸。愛してるからな。」

と、つぶやいた。

めったにそんなことを口にしない彼に言われると年甲斐もなく胸がキュッとなってしまう。

彼いわく、私が逃げてしまわないように定期的に言わないとだめらしい。

と、なんだか理論的にまとめる彼だが結局は自分が言いたいだけなのだ。

そーゆーところもすきだ。

「うん、私も愛してるよ」

そーゆうと彼はムクッと起き上がり私を抱えて寝室に行こうとした。
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