14年目の永遠の誓い
「一ヶ月の早産で緊急帝王切開での出産。心拍が弱くなって、もう待てないって。
未熟児にしても発育が悪くて、心臓の状態は予想以上に悪くて、すぐにNICU(新生児集中治療室)に入れられて、正直に言うとね、一週間どころか、数時間生きられるか……と言う状態だったの。
生きて産まれたのすら、運が良かったと言われたわ」
おばあちゃんはわたしの顔色を伺いながら、話を続ける。
その辺りの話は、おじいちゃんからも聞いたことがある。
それより詳しくて、それより悲惨な話だった。
「生後一週間で、最初の手術。一か八かと言われたわ。でも、しなきゃ命はないだろうって。
響子さんはまだ入院中。それでも、さすが外科医で、気丈に振舞っていたわ。でも、無理はさせたくなかったの。
幹人は産まれたばかりの娘に課せられた試練に混乱の極み。響子さんの前では辛うじて強がっていたけどね、仕事もあるし、とても全てを任せられる状態ではなかったわ。
そこで、正明さんとわたくしの出番。
響子さんは一人っ子で、ご両親も既に亡くなられていて、他に頼れる人もいなかったの。
治療方針は正明さんが、産褥期の響子さんと陽菜のお世話は、わたくしが受け持ったわ」
おばあちゃんは愛おしげにわたしを見つめた。
「初めて病院の外に出たのは、生後半年。
大きな手術の前に、どうしても家族で過ごしたいって、一泊二日の外泊だったの。
生まれて1年はほとんどを病院で過ごしたのよ?
……響子さんは、あなたを育てるために、病院を退職しようか迷っていたわ。健康な身体に産んであげられなかったと、悩んでもいた。
言わないけどね、見ていれば、同じ母親として、それは痛いほどわかったの」
おばあちゃんはわたしの頭をなでながら、静かに続ける。