14年目の永遠の誓い

「幹人の稼ぎだけで、十分に食べていけるのに、陽菜の看病もせずに働いて良いのかと、響子さんは随分迷っていたわ」



わたしには、働いていないママなんて、正直想像もできない。

けど、そうか、……迷ってくれたんだ。

おばあちゃんは、ふうっと息をついた。



「それをね、止めたのが……わたくしと正明さん。

響子さんのキャリアを潰したくないという思いもあったけど、正明さんは病院を継がなかった幹人がお医者さんと結婚したのを、それはそれは喜んでいたのね。

後を継いでもらえるって。結婚した当初から、いずれは大学病院を辞めて、こちらに来てもらう話が出ていたのよ。

……陽菜に話したこと、なかったわね。なんで、おじいちゃんが病院を経営しているのに、息子のパパが商社を経営しているのかって」



問われて、わたしは横になったまま小さく頷く。



「牧村商事は元々、牧村の家の家業だったの。

医業は、正明さんが家を継がずに、自らの生業として求めたもの。
最初はそれで良かったの。病院経営は順調だったし、牧村商事にはお兄様が二人いらした。

だけど、正明さんを応援してくれたお兄様たちお二人が相次いで亡くなってね。
牧村商事を継がなくてはならなくなったの。その時にはもう牧村総合病院も開業して起動に乗っていて、正明さんも病院を手放したくなかった。

結局、お祖父様……陽菜のひいお祖父様が折れる形で、幹人が跡を継ぐなら……とおっしゃられて、あの子を教育したの」

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