14年目の永遠の誓い
「わたくしも、幹人には正明さんのように、自由に夢を追わせてあげたかったのよ。
だけど、お義父さまもお上手でね。
早くから幹人を海外に出してね、色んなものを見せたわ。
会社の仕事も早くから触らせていた。
大きな金額を動かしてお商売をする楽しさを、ほんの若造の内に覚えてしまったのね。
あれは麻薬みたいなものなのかしら? あの頃は、誰もが起業できるような感じでもなかったのもあってか、幹人もそう言う方向に逸れることもなく、気がついたら嫌がりもせず牧村商事に入社していたわ。
早くからお商売を教わっていたし、語学も堪能、海外情勢や文化的背景にも詳しくて、それをうまく仕事に結び付けられたのね。
ぐんぐん業績を伸ばして、気がついたら、すんなり代替わりしていたわ。
そうして、いつの間にやら、響子さんと出会って恋に落ちて、熱烈なプロポーズを何度も断られた後で、ようやく結婚にこぎつけたの」
「……ママ、プロポーズ、受けなかったの?」
「ええ。仕事を続けたいから、牧村商事の社長なんかとは結婚してる暇はない……ですって」
ママらしい。
クスクス笑うと、おばあちゃんも楽しげにほほ笑んだ。
「結局ね、幹人は響子さんを正明さんに会わせて、
『親父は医者だし、その意義も忙しさも十分に分かっている。子どもができても、ベビーシッターやヘルパーを雇うくらいの稼ぎはある。だから、そんな事を理由に断らないでくれ。俺を嫌いだから結婚できないって言うならまだしも、そうでないなら検討してくれ』
って。
響子さんは迷っていたと思うわ。その時どんなに調子のいい事を言っていても、実際に結婚したら、子どもができたら、手のひらを返す人だって、いくらでもいるでしょう?
けどね……」
おばあちゃんはそこで愉しげに笑った。