14年目の永遠の誓い

朝8時に手術室に入ったハルが、15時間に及ぶ手術を終えて、ICUに移ったのは日が変わってからだった。



「ハル、よく頑張ったね」



手術は成功したけど、人工心臓を外した後、心拍がなかなか戻らなかったと聞かされた。

過去何度も開胸手術をしていたせいで癒着がひどく、出血もかなり多かったと聞かされた。今もまだ、輸血を続けている。

深夜だというのに、昼と変わらず明るく、人の声が飛び交い機械音の鳴り響くICUで、オレはハルの冷たい手を握っていた。

いつも以上に血の気が引いたハル。

人工呼吸器や点滴や輸血を始め、様々な管と機械につながれたハル。



こんなに早く術後のハルに会わせてもらえたのは、初めてだった。



「叶太さん、そろそろお時間ですよ」



看護師さんに声をかけられる。



「後少し」



と言うと、思いがけない言葉が返って来た。



「術後の執刀医からの説明ですから」



……ああ、そうか。

パートナーになるってのは、こういう事か。

ハルの側にいられるだけではなく、ハルよりも早くにハルの状態を教えてもらえる。



想像以上の待遇に、身が引き締まる。

たった18歳の若輩者のオレへの敬語にも、じき慣れるんだろう。

いやむしろ、ハルの周りに普段からいる看護師さんみたいに、軽口を叩いてもらえる関係になっておきたい。

ハルは一生、病院と切れない縁がある。
ハルを託す人たちとは親しくなっておきたい。



「院長室の隣の第一会議室に、みなさん集まられます」

「ありがとう。すぐ行きます」



それから、オレはまだ目の醒めないハルの手を両手で握り、



「ハル、ちょっと行ってくるね。ハルがどんなに頑張ったか教えてもらってくるね」



とささやき、パイプ椅子から立ち上がった。



   ☆   ☆   ☆

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