14年目の永遠の誓い
翌日、授業中に緊急呼び出しを受けて、既に呼ばれていたタクシーで病院に向かった。
血栓が心臓に飛んで、よりによって冠動脈を塞いだと言う。
大きな手術の直後、薬物治療やバルーンカテーテルの選択はできず、再度開胸でバイパス手術をすると言われた。
オレが到着すると、ハルは既に人工呼吸器を挿管され、意識をなくしていた。
ほんの数時間前には、顔色は悪いながらも、笑顔で、
「行ってらっしゃい」
と言ってくれたのに。
山ほどある同意書にサインする手が震えるのを止められなかった。
ハルは自分の意思など何一つ挟まず、まな板の上の鯉状態。運命というものに振り回されているとしか思えなかった。
オレはただハルを見ているしかできず、何一つ代わってあげる事もできず、ずっと側にいる事すらできず……。
正直、しんどかった。
想像以上にツライ状況。
けど、だからと言って、蚊帳の外に置かれて後から聞かされるよりは、100倍良い。
ハルが手術室に入って数時間後、明兄が帰郷した。
「お前、大丈夫か?」
聞かれて、
「大丈夫に決まってる」
と答える。
オレが大丈夫じゃなくて、どうする?
「眠れてるか?」
「まあ、そこそこには」
ぐっすりには程遠いんだろうけど、一睡もできないなんて事はまったくない。
逆に、ハルがオレを必要とした時に、いつでも飛んで来れるように、ガッツリ眠ろうとして気合を入れすぎて眠りそびれてるくらいだった。
だから、体力に不足はない。
ただ、やっぱり、どんなに強がってみたところで、不安は胸をよぎるから……。
心配で胸がちぎれそうになるから……。
本当はきっと、全然大丈夫でなんて、ないんだろう。