14年目の永遠の誓い

「大丈夫だ」



明兄が言った。



「陽菜は、正直、大きな手術では毎回、かなり危険なところまで行く。なぜか、トコトン手術と相性が悪い。……けど、ちゃんと戻って来るから」



「……うん。分かってる」





ハルの手術が無事に終わったと聞かされたのは、やっぱり深夜。

昼と夜に何か食べたような気はするのに、何を食べたのかも覚えていない。お腹が減ったという感覚も、まったくなかった。

ただ、喉だけがカラカラに乾いて、やたらとミネラルウォーターを飲んだ気がする。



ハルに会いに行くと、前回同様、呼吸器を付けられ、たくさんの管につながれ、機械に囲まれ、痛々しい姿のハルがいた。

胸だけでなく、バイパスに使う動脈を取るために腹部も切ったと聞いている。



「……ハル、よく頑張ったね」



ハルの心臓は、ちゃんと動いている。

傍の心電図のピッピ、ピッピと言う音が、たまらなく愛しかった。





数日後、目が覚め、人工呼吸器が取れたハルは、かすれた声でたどたどしく、心配かけてごめんねと言った。



「ぜんぜん気にすることないから! あ、もちろんハルのことが心配じゃなかった訳じゃないよ!?」



慌てて言い訳をすると、ハルがかすかに笑った。



「ハル、オレにして欲しいことない?」



聞くと、



「……手、にぎって……ほし…」



とねだる。



「もう、握ってるよ」



とつないだ手をそっと上げると、ハルはまたふわっと笑った。

まるで力の入らない、冷んやりしたハルの手を、オレは面会時間中、ずっと握り続けていた。



   ☆   ☆   ☆


< 217 / 228 >

この作品をシェア

pagetop