14年目の永遠の誓い
「大丈夫だ」
明兄が言った。
「陽菜は、正直、大きな手術では毎回、かなり危険なところまで行く。なぜか、トコトン手術と相性が悪い。……けど、ちゃんと戻って来るから」
「……うん。分かってる」
ハルの手術が無事に終わったと聞かされたのは、やっぱり深夜。
昼と夜に何か食べたような気はするのに、何を食べたのかも覚えていない。お腹が減ったという感覚も、まったくなかった。
ただ、喉だけがカラカラに乾いて、やたらとミネラルウォーターを飲んだ気がする。
ハルに会いに行くと、前回同様、呼吸器を付けられ、たくさんの管につながれ、機械に囲まれ、痛々しい姿のハルがいた。
胸だけでなく、バイパスに使う動脈を取るために腹部も切ったと聞いている。
「……ハル、よく頑張ったね」
ハルの心臓は、ちゃんと動いている。
傍の心電図のピッピ、ピッピと言う音が、たまらなく愛しかった。
数日後、目が覚め、人工呼吸器が取れたハルは、かすれた声でたどたどしく、心配かけてごめんねと言った。
「ぜんぜん気にすることないから! あ、もちろんハルのことが心配じゃなかった訳じゃないよ!?」
慌てて言い訳をすると、ハルがかすかに笑った。
「ハル、オレにして欲しいことない?」
聞くと、
「……手、にぎって……ほし…」
とねだる。
「もう、握ってるよ」
とつないだ手をそっと上げると、ハルはまたふわっと笑った。
まるで力の入らない、冷んやりしたハルの手を、オレは面会時間中、ずっと握り続けていた。
☆ ☆ ☆