14年目の永遠の誓い

ハルがいつもの特別室に移れたのは一週間前。

ようやく一安心だと言われたのは、まだ昨日のこと。

手術から、一ヶ月近くが経過していた。



二度目の開胸手術の後も、ハルはまた高熱に悩まされ、何度かの心停止を起こした。

不整脈のコントロールが完璧じゃないから、まだ心電図は外せていないし、歩行も付き添い付きでトイレまで。

それでも、今では短時間ならベッドに起きていられるようになったし、大分顔色も良くなった。



特別室に移ってからは、オレも毎日、泊まり込んでいる。

三人掛けのデカいソファが実はソファベッドだと知ったのは、泊まり込むようになってから。

着替えや風呂に入りに家には帰るし、学校にも行くけど、それ以外の時間はすべてハルの側にいる。

呆れつつも、誰も咎めないから、やっぱり結婚したのは大正解だったと心底思う。



最近、ハルは少し長い時間話せるようになってきた。

日に日に体調が良くなっているのを感じる。



「でもね、血栓が飛んだのが心臓で良かったんだよ」



二度目の手術について話をしていて、ハルがポンとそんなことを言った。

ハルの言葉に耳を疑う。

冠動脈が詰まるとは、平たく言うと心筋梗塞だ。冗談抜きで、健康な人がなっても命に関わる状態で、とても良かったとは思えない。

短時間でも血流が滞ったハルの心臓の状態は、更に悪化している可能性も高い。

それはハルも知っているはずなのに……。

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