14年目の永遠の誓い
「えっとね……カナには病気じゃなくて、わたし自身を見て欲しいなって、そう思ったの」
ハルはオレを見て、またふわっと笑顔を浮かべた。
「お医者さまだと、わたしの中の病気を見るでしょう?」
「……えーと、そう……かな?」
「どうやったら、この心臓を治せるかとか、長持ちさせるにはどうすれば良いかとか、そう言うの、考えるでしょう?」
「……オレ、医者じゃないからよく分からないけど、……まあ、そうかも?」
ハルはオレの困った顔を見て、クスクス笑った。
「ママも、おじいちゃんも、専門が心臓だったら良かったのにって、きっと思ってるんだよ。
もちろん、自分のお仕事に誇りを持っているんだよ。けど、どこかで、そう思っているだろうなって……」
お義母さんからも、じいちゃんからも、そんな話は聞いたことがない。
……けど、ハルが言う通りかも知れない。
子どもの頃に忍び込んだ、お義母さんの部屋には心臓病関連の専門書が並んでいた。じいちゃんの院長室も同様に、心臓に関する専門書が並べられていた。
「だけどね、わたしは専門が違っていて良かったなって思うんだ。
お兄ちゃんも、心臓以外にすれば良いなって思うんだけど……」
ハルは少し遠い目をした。
明兄は間違いなく卒業後の進路に、循環器内科か心臓血管外科を考えているだろう。もしくは、先天性心疾患を扱う小児循環器……。
ハルもそれは察している。
ハルはそれ以上、何も言わなかった。
誰のためであれ、明兄が自分で選んだ道に口を出すようなハルじゃない。
けど、きっと志望は変えないだろうと思いつつ、オレは機会があったら明兄にこの話をしてやろうと思うのだった。