14年目の永遠の誓い

「……カナ」

「ん?」



ハルが手を伸ばしてきたので、そっと握る。

相変わらず冷たいハルの手。

けど術後すぐとは違い、今はそこにハルの生きる力のようなものを感じた。



「ごめんね」

「……え? 何が?」

「……しんどかったでしょう、最初の手術から、ここまで」

「ハル?」



しんどかったのは、オレではなく、ハルだろ?



「わたし自身は寝てるだけで、何もできないんだけど、カナはきっと、色んなことを聞かされて、判断させられて、

えーと……何ていうか、今にも死にそうなわたしに会わされて……」



思いもかけないハルの言葉に、思わず口を挟む。



「ハル、オレは……」



けど、ハルはオレの言葉を遮って続けた。



「本当は、7月に手術を頼んだ方が良いと思ったの。そう、勧められたし」



ハルはオレの目を見つめた。



「けど、大きな手術で……危険だって言うのも分かっていて、だから、本当は、ダメだって分かってたんだけど、」

「……ダメ?」

「結婚したばかりで、……たった10日ばかりでわたしが死んじゃったら、あまりに申し訳なさ過ぎるでしょう?」

「ハル!?」



結局、危険だと言われても、オレは、そんな覚悟は一瞬もしなかった。
絶対に、ハルは戻って来ると信じていた。

動揺はしたし、身の置き所のない不安な気持ちにもなった。
けど、オレは、そんな未来は想像もしなかった。



「あのね、信じた未来がやって来るんだよ?」



思わず、言っていた。



そんな未来をイメージしちゃダメだと言いたかった。

どんなに嫌な言葉が頭をよぎっても、ハルは大丈夫だと信じていた。

オレは、ハルが元気になる未来を信じていた。

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