14年目の永遠の誓い
ただ、それはオレの事情でしかない。
ハルの身体の状態はハルがそう思うだけの根拠があるくらいに悪くて、だからこその危険を押しての手術な訳で……、
実際にハルは何度も生死の境をさまよっていて……。
だから、もし、ハルがそんな暗い未来に取り付かれてしまうのなら、
オレはそんな未来は見るなと言うのではなく、それを吹き飛ばせる人間にならなきゃいけない。
なのに、思わず口にしていた。
信じた未来がやって来るはずだから、そんな楽しくない未来は想像するなよ……ハル。
途中で言葉を切り、その先を言えずに黙り込んだオレに、ハルは
「……カナ、分かってる。大丈夫だよ」
と優しくほほ笑んだ。
ハルはきゅっとつないだ手に力を込めた。
「分かってるから、わたし、ワガママ言って、手術を遅らせてもらったの」
「え? どういう事?」
「カナが側にいてくれたら、がんばれる気がした。
ちゃんと結婚して、奥さんになったら、カナとの未来を嫌でも見つめさせられると思った」
「……嫌でも?」
きっと、オレは変な顔をしていたんだろう。
ハルはくすりと笑った。
「変な言い方だね。……逃げ道を断ちたかったのかな? 難しいな。
あのね、結婚って、結婚相手への責任があると思うの」
「責任?」
「そう。……何て言うか、岩にかじりついてでも……、運命に逆らってでも、カナと生きたいって、生きなきゃって思いたかった」
思いたかった。
つまり、ハルはそれまで、そういう気持ちを持っていなかったって事。