14年目の永遠の誓い
薄っすらと目を開けてほほ笑みながら、ハルは
「ただいま」
と返してくれた。
ここは、オレが子どもの頃から何度も遊びに来ているハルの部屋だけど、
今ではオレたち2人の寝室となった。
見慣れたハルのベッドやハルの勉強机や本棚は、もうない。
午後の日差しがレースのカーテン越しに部屋に差し込み、まだ真新しいオレたち2人分のベッドやデスク、本棚を照らした。
ハルのお気に入りのロッキングチェアだけが、昔と変わらず窓際に置かれていた。
オレは寝息を立て始めたハルをベッドに寝かし、そっと布団を掛けた。
「ハル、愛してるよ」
ささやき、ハルの額にキスを落とす。
眠るハルの髪を梳き、手を握り、そっと頬に触れる。
ハルの穏やかな寝息に耳を傾けながら、ようやく戻ってきたハルとの日常を噛みしめる。
まだまだハルは本調子ではない。
少なくとも一ヶ月は自宅療養をするように言われているし、一緒に学校に行ける日が来るのは、まだ当分先だろう。
だけど、朝目が覚めたらハルが隣にいて、夜寝る時にもハルが隣にいる。
夜中に誰かが見回りに来る事もなければ、深夜、他の病室から漏れ聞こえるざわめきに息をのむ事もない。
同じ部屋で、何に煩わされる事なく2人きりでいられると言うのが、どれほど幸せな事か……。
きっと、ハルはもっと元気になる。
開胸・開心手術の傷が癒えれば、以前よりは状態の良い心臓がハルを元気にしてくれる。
きっと……。
「ハル、愛してる」
オレは何度でも、ハルへの愛を口にする。
ハルへの愛しさが、尽きることなくあふれ出てくる。
「ずっと……一緒にいようね」
オレは、ハルとの幸せな未来を思い浮かべながら、永遠を誓った教会を思い浮かべながら、ハルの頬にそっとキスをした。
(完)