無気力系男子がホンキを出したら
寝ている風斗のぴょこんと跳ねた黒髪を見ながら椅子に座ると、ふと隣から視線を感じてそこに顔を向ける。
そこにはフワリと優しく微笑むこのクラスの王子様、佐古(さこ)君がいて。
黒縁メガネの奥の瞳が、優しくあたしを捉えていた。
「おはよう、住田(すみた)さん」
「あ、お、おはよう……!」
まさか佐古君に声をかけられるなんて!
爽やかで王子様みたいな顔立ちの佐古君は、風斗とは正反対でいつもニコニコ笑っている。
うわー、本物の王子様みたいだよー。
風斗とはまたタイプが違うイケメン。
イケメンというよりも、美少年っていった方がしっくり来るかも。
「前から住田さんと話してみたいと思ってたんだ」
「え?あ、あたしと……?」
ど、どうして?
思わず目を見開く。
だってまさか、佐古君があたしを知っててくれたなんて思わなかった。
「住田さんとお近付きになりたかったから」
「え……!?」
お、お近付きに?
なんで!?
わけがわからなくてあたふたする。
顔が熱いのは佐古君を好きなわけじゃなくて、学校の王子様に話しかけられたら誰でもこうなると思う。
赤くなった頬を隠すように軽くうつむくと、隣から突き刺すような視線をひしひし感じてドキリとした。
いつ起きたのか、風斗が机に頬杖をつきながらぼんやりあたしを見下ろしている。
「な、なに……?」
その視線は、なんだか少し不機嫌そう。
でもこれは、あたしだから見抜ける風斗の顔。