キスは目覚めの5秒後に
書類の内容はアンケート。
書かれた感想を見ると飲食業のものっぽいけれど、どこの企業かはわからない。
「出来ました。ご確認ください」
約束した30分をオーバーしたけれど、なんとかやり終えて印刷した書類を渡すと、彼はサッと確認して頷いた。
「流石だな、助かるよ」
「いえ、役に立てて良かったです」
「やっぱり、あんたに頼んで正解だったよ。これでスムーズに仕事ができる。次はこれを頼む。スウェーデン語に訳してくれ」
これはあまり急がなくていいけど明後日までに頼むなと渡してくれた書類は、5枚ほどある。
枚数は少ないけど細かい文字がびっしりあって、すごくやりがいがありそうだ。
さっと内容を見ると、始業時間や服装の項目があって、どうやら就業規則のよう。
クライアントのものか、それとも橘さんが作ったのかな?
デスクに戻ってエクセルを開いていると、コーヒーのいい香りが漂ってきた。
「はい!ミヤコ、コーヒー飲む?」
どうぞ~と言って差し出されたトレイには、様々な模様のカップが幾つか置かれている。
その中で一つだけあった白い紙コップを取った。多分これがゲスト用だ。
「ありがとう」
「気にしないで、なんでもないことよ」
そう言ってチャーミングに笑う彼女は、さらさらの金髪に青い目をしている。
彼女の名前は確か、エレンだ。
女子社員たちは部外者の私を普通に受け入れて、こうして話しかけてくれる。
昨日の私の状態を見ていた彼女たちはとても心配していたらしく、オフィスに来たらすぐ『平気?』とみんなに話しかけられた。