金木犀と青空
「…だから、ここはこれが答えなのーっ!わかる瑞希(ミズキ)?」
「はぁ?絶対俺が合ってるし結音(ユイネ)が間違ってんだよ!」
今日も朝から見せつけてくれるなこのバカップル。
勿論この会話が私が発してるものなら胸を張って「リア充ですが何か」って言ってるだろうから、否定するわけにもいかない。
盛大な溜め息とともに振り返る。
ふわふわ(人工)の髪を揺らしながら、萌え袖とやらをして口に手を当てて笑っている結音と
背伸びしようとしてんだかカッコつけてんだかワックスなんかつけちゃって、そんでもって第三ボタンあたりまで開けちゃってる瑞希。
高校生の平均みたいなカップルに見えるだろうがこの二人は付き合っていない。
そして私を含めた三人は幼馴染み、腐れ縁というもの。
お互い受験に受かってから高校名を言おうなんて約束してたら
三人とも同じ高校だったという本当に奇跡。
さらにいえば、同じクラスで、結音と瑞希は隣同士で、あたしは瑞希のその前の席。
どこまで一緒なんだ本当。
だけど最近あたしは気付いちゃったりしてる。
瑞希の結音への気持ちを。
「沙良(サラ)〜?なんか顔怖いぞ〜?」
手をあたしの前でぶんぶん振ってくるけど、萌袖とやらが目にあまる。
「そんな顔してっと、ブサイクMAXだよ」
容赦なく瑞希を殴る。グーで。
誰かさん達のせいだってのに。
いや、あたしの気持ちのせいか。
三人がいつまでも三人じゃいられないのは分かってる。
きっと結音だって瑞希のこと、嫌いじゃないと思う。
あたしさえ離れれば、それでいいんだ。
…でも。できない。おじゃまむしだとしてもまだ離れたくない。
「沙良?」
自分の言葉にあたしが傷ついたのかと勘違いした瑞希が覗き込んでくる。
そんなことされたら…
…
…ごめん。ときめかない、やっぱり。
わかってはいたけれど、あたしは瑞希に恋愛感情なんてこれっぽっちもない。
もちろん結音に対してだってない。言うまでもないけど。
あたしは、ただ、三人でいたいのだ。
でもそんな理由じゃただのワガママな気がして、子供じみてる気がして。
瑞希が好きだから説をたてようとしたけど、やっぱり、ごめん瑞希。