金木犀と青空


「…もう!!」


なんなのあいつ!

みなまで言えないのが私の弱いところだとつくづく思う。


「まあまあ日菜子(ヒナコ)落ち着きなって」


私をあやすように言ってくるこの子は親友の和夏(ノドカ)。

おそらく今日も私の愚痴が始まることを知っている上での適当な対応である。

けど私は気付かない振りで続ける。


「だってさ!植平(ウエヒラ)が悪いじゃん、どう考えても」

「まぁ、あんたの言うことにも一理あるとは思うけど」


そう言ってチラリと植平を見ると美憂(ミユ)ちゃんと楽しそうに話してる。

「大体、日菜子の言ったことにも問題はあると思うよ?『美憂ちゃんと植平なんて不釣り合いだって』とか煽るからでしょ?」


「う…」

それを言われたらオシマイだ。

最近、植平とのメールのやり取りで、好きな人の話をしてる。

そして昨日

『俺、美憂ちゃんと噂になってるんだよなー。知らなかった?』

なんて私の気持ちを踏み躙(にじ)るかのようなメールを送ってきたからつい…つい言ってしまったのだ。

本当にそんなこと言うつもりなんて無かったけど、勿論返信は来ないし、朝来たらあの有様だ。

おまけにチラチラとこっちを見てくるから余計に腹が立つ。

「あんたさあ…割と疎(うと)いよね…」

「え?」

「いや、まあ、いいんだけど…」

はぁ、と和夏と同時に溜め息をついてしまった。


――――――――

「あっ!日菜子ちゃ〜ん!偶然!」


なんという偶然か駅のホームで美憂ちゃんとバッタリ合ってしまった。


「そう言えばね…今日植平くんがね…」

わー…聞きたくない話題出た…

さすがに物理的に耳を塞ぐのは無理なので、私は心の耳に蓋をした。…現代文45点の比喩表現は見苦しい。


「日菜子ちゃんのこと沢山話してたよ」

そう言ってふふふと笑う美憂ちゃん。

…?今なんて?

「た、沢山てどんな話してたの??」

「自分で聞くのが一番だと思うよ〜」

美憂ちゃんは意外と一枚上手だ。


もし植平が惚れてしまってるならしょうがないと思う。

でも今日の夜はメール送ってみようと思う。

『美憂ちゃんと何の話してたの?』って。

…なんかこれじゃあ私ヤキモチしてるみたい。

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