ブラック-SS-
それはいつも寝ているかダルそうにしているかだけの彼の、こんなにも焦った所を見たことが無いからで、
いや、正しく言えば彼はちっとも焦っているようには見えない。
だけど、
「どこだ」
それは静かでたったそれだけの言葉なのに、どこか怒りの含まれたそんな声。
それが限りなく彼を焦らせているんだと私には感じた。
「南校舎の一階!!」
立ち上がったその動きはゆったりとした物だったのに、篠崎君の言葉を聞いた瞬間、ありえない速さで教室を出て行った彼にきっとクラス中が驚いたと思う。
それにつられて、クラスメート達も野次馬なのか教室を飛び出して行く。
だけど私は行かなかった。
いや、行けなかった。