危険な愛を抱きしめて
「……オレは……あいつに受け入れて……もらえるまで……
 ヒトの……愛し方を……知らなかった……から……
 こういう……愛し方……しか……
 できな……」

「……莫迦なヤツ。
 つくづく、本当に、莫迦で不器用なヤツだな、お前は!」

 泣いているような薫の叫びに。

 オレは、ふふふ、と吐息をついた。

「……その。
 莫迦で……不器用な男のオレに……用もないのに……くちづけるあんたは……
 ナニを血迷って……いるんだか……
 オレは……男には……いや……
 もう……他の女にも……惚れねぇぜ?」

「……俺だって、男になんて惚れるか、莫迦」

 薫は、嘲(わら)う。

「妹の葬式を出した……
 こんなやりきれない夜は。
 俺だって、商売道具に手をつけたくもなる。
 俺があんたにくちづけたのは……
 薬の魅せる、幻の熱さに突き動かされただけだ」

 薫は鋭く囁いた。

「それと。
 もし、他に理由があるのなら。
 これから先、当分会うことも無いだろう、お前に……
 薬抜きで、一度くらいは、別れのキスっていうヤツをしてみたかっただけだ」
 

 
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