危険な愛を抱きしめて
 



 うぁ……キッツ……!


 こんなに。

 こんなにケーキ作りが大変だったなんざ、知らなかった。

 定位置から離れて、ごそごそと。

 借りたエプロンを着だしたオレを、由香里が心配そうに見てたけど。

 あえて無視して……っていうか。

 こっちの心臓のことを風ノ塚にバラしたら、そっちの正体だってバラしてやる、と。

 由香里とジェスチャー混じりの無言の攻防をしながら作った、はじめてのケーキだった。

 なには、ともあれ。

 椅子に座っているのと、実際にやってみるのは大違いだ。

 立ちっぱなしの作業だったり。

 正確に量を測るだけでなく。

 材料を全部合わせるまで、素材にあった温度を保たなくてはいけなかったりは、面倒だったけれど。

 一番大変だったのは、泡立て作業だ。

 

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