危険な愛を抱きしめて
……しかし。
「……オレって、こんなに不器用だったか?」
そう、思わず、しみじみ、つぶやくほど……ケーキはひどいデキだった。
格好が悪く。
どこかの国の斜塔のように。
今にも崩れそうな危ういバランスを保っている、オレの初めて作ったケーキを見て。
風ノ塚は、楽しそうに笑った。
「なにか、とてもリズミカルなケーキに、なりましたねぇ~~」
「……笑いごとじゃねぇ……でしょう?」
不機嫌になるオレに。
風ノ塚は首を振ると、ご機嫌な顔をして微笑んだ。
「最初から、全部が全部うまくいってしまう人間は~~
努力を忘れて、結局伸びません~~
はじめてで、これくらいできれば上等ですし。
これから始めるにあたって、苦手なことが分かれば。
練習のしがいっていうものだってあります~~
それに。
味が良いのは、ぼくが保証しますから大丈夫ですよ」
言って、風ノ塚は、にやり、と目をさらに細めた。
「ケーキは、好きな人のために作ったんでしょう?
ど~~ですか?
そのコに、食べさせてあげたら?」
「えっ……」