危険な愛を抱きしめて
 


 ……しかし。



「……オレって、こんなに不器用だったか?」




 そう、思わず、しみじみ、つぶやくほど……ケーキはひどいデキだった。


 格好が悪く。

 どこかの国の斜塔のように。

 今にも崩れそうな危ういバランスを保っている、オレの初めて作ったケーキを見て。

 風ノ塚は、楽しそうに笑った。

「なにか、とてもリズミカルなケーキに、なりましたねぇ~~」

「……笑いごとじゃねぇ……でしょう?」

 不機嫌になるオレに。

 風ノ塚は首を振ると、ご機嫌な顔をして微笑んだ。

「最初から、全部が全部うまくいってしまう人間は~~
 努力を忘れて、結局伸びません~~
 はじめてで、これくらいできれば上等ですし。
 これから始めるにあたって、苦手なことが分かれば。
 練習のしがいっていうものだってあります~~
 それに。
 味が良いのは、ぼくが保証しますから大丈夫ですよ」

 言って、風ノ塚は、にやり、と目をさらに細めた。

「ケーキは、好きな人のために作ったんでしょう?
ど~~ですか?
 そのコに、食べさせてあげたら?」

「えっ……」
 





< 131 / 368 >

この作品をシェア

pagetop