危険な愛を抱きしめて
「……だから」

 その、話自体があやしくてイヤだって言うのに!

 そう、言い募ろうとして、止めた。

 今や、ケーキ屋にいる人間は、全員。

 オレたちを遠巻きにして見ていたし。

 それに、まあ、確かに。

 アヤネは、前にも悪いヤツに絡まれていたのは、確かだったから。

 もし、万が一にでも何かあってからだったら、きっと。

 目覚めが悪いに違いなかった。

「……わかったよ。
 仕方ねぇから、送ってやる。
 ただし……」

「わぁい!
 嬉しい!
 音雪、大好き!」

 アヤネは、突然、コロッと態度を変えると。

 オレの話の腰を折って、抱きついて来やがった。

「……聞けよ、ヒトの話」

「一緒に帰ってくれるなら、私。
 音雪が、何を言ってもOKだから、いいもん!」

 う。

 アヤネの大きな目が、きらきら輝いた。

 まるで。

 少女マンガに出てくる女みたいに、オレを見る。

 ささいなことでも、すぐ。

 オレに全部を預けるアヤネの言動は。

 オレが、アヤネを嫌う一番の理由である半面。

『かわいい』と思うことでもあったのは確かだった。
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