危険な愛を抱きしめて
「何か~~
 とても、物騒じゃないですか~~」

 わざとやっているのか、マジ(真剣)なのか。

 よく分からない、いつもの口調で、風ノ塚は、言葉を紡ぐ。

「篠原さんは、イヤがっていますし~~
 ケーキを食べに来たワケじゃないお客は、迷惑です~~
 ここは、何もせず~~
 みんなで仲良くお帰り願いたいのですが~~」

「ナニ言ってんだ、この野郎は!」

 風ノ塚の、身のこなしは。

 どう見ても、何か武道をやっているワケではない。

 由香里の兄貴の薫みたいに、ケンカ慣れしているようにも見られなかった。

 なのに。

 男に、睨まれても。

 風ノ塚は、びくともしないで話を続けた。

 肝が座っているのか。

 莫迦なのか。

 胸を張って、ひょうひょうと喋る風ノ塚を、由香里は眺めていた。

 その。

 彼女の嬉しそうな表情は。

 どんなに察しが悪くても、容易に想像がつく。

 そうか。

 由香里は、調子が悪いんじゃねぇ。

 自分の本当の姿を知らねぇ。

 か弱いイメージの由香里の方が好きだっていう、風ノ塚の前だから、戦えないのか!
 

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