危険な愛を抱きしめて
「……薫。
 なんだ? そのふざけた……しゃべり方は……」

「あら。
 雪が、少しでも前向きになれたら、いいな、と思って」



 ……ずきん




 また、だ。




 名前を呼ばれる度にココロが撃たれる。



 ……壊れる。




『雪』と呼ばれる度に。




 由香里が、オレを呼んでいた名前を言われる度に。




 壊れてゆく。





「……似てねぇよ……
 まったく……似てねぇぜ……
 それに……由香里は……大事な話をする時は……
 いつも……オレの腕の中で……話をするんだ……」

 オレの言葉に。

 薫は、由香里の目をすぃと細めた。

「あたし、今……
 薬で変よ……?
 これ以上、雪に触ると、止まらないかもしれないわよ?」

 
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