危険な愛を抱きしめて
びょょょよよよよょょょ
風景に圧倒されて、思わず歩くのをやめたとき。
谷側の方から、強く、生暖かい風が吹いた。
その風に押されるように。
カラダがぐらり、と草原側に傾いて、どきり、とする。
……冷たい……!
そう。
草原は、見かけとは違い、恐ろしいほどに冷えていたんだ。
氷よりも。
他の。
今まで、触ったどんなものよりも、冷たく、寒い。
まるで。
……まるで、それは『死』
そのものであるかのように。
草原は。
落ちてさまよいだしたら、二度とと戻ることはない
『死』の世界であるように。
……!
本能的な恐怖に身をすくませて、慌ててバランスを立て直すと。
今度は、がくん、と立っている歩道自体が、大きく揺れた。
なにが起きたのだろうか?
突然の振動に。
今まで歩いていた道の、行く手を眺めて息を呑んだ。