危険な愛を抱きしめて
「道が、壊れてゆく……!」

 そう。

 オレが、これから歩いてゆくはずの木製の細い歩道が。

 地平線の向こうから、こちらに向かって、崩壊して来ているんだ。

 まるで。

 次々と小爆発を繰り返しているかのように。

 猛烈に、細かい木片を吹き飛ばしながら、みるみる壊れてゆく。

 その速さと、爆発の大きさに驚いて。

 来た道を戻ろうと、振り返ると。

 後ろからも道は崩壊して来るようだった。

 どうして壊れて行くのか、判らなかった。

 だけれど、はっきりしているのは。

 道が全部壊れて、オレは。

 遠からず。

 冷たい死の草原か。

 底の見えねぇ奈落の谷底のどちらかに、突き落とされるだろうと言うことだった。

 落ちる!

 落ちる!?

 怖い!

 怖い!!

 怖い……!

 どちらに落ちても怖かった。

 草原と、谷底と。

 どちらに落ちても、二度と戻って来れないだろうという、本能が伝える感覚に。

 情けねぇことに、足がすくむ。

「……!」

 声も出ねぇほど、パニックを起こして、立ち尽くすオレに。

 かすかな声が聞こえて来た。




 ……暗い、深淵の谷底から。
 
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