危険な愛を抱きしめて
 






 がくん、と。


 突然、視界に光が満ちた。

 ……オレ。

 オレは。

 谷底に落ちていったはずじゃなかったか?

 戸惑うオレに、異国の言葉が、追い討ちをかける。

「Oh……Are you ok?」

「……Yes」

 間抜けな英語教師が発音するような、日本語英語じゃねぇ。

 ネイティヴの質問に反射的に答えて、ようやく。

 オレは、周りを見る余裕ができた。

 今までの、ふわふわした薄闇の世界じゃねぇ。

 ぐっと現実感を増した。




 ……メタル・ブルーの世界を。
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