危険な愛を抱きしめて
 ガキの頃に盲腸……虫垂炎で、一度手術をしたことがあった。

 だから。

 ここが、病院で手術をした直後に入る回復室だってことは、わかった。

 だけども。

 周りに居る医師や看護師が、全員外国人で、日本語なんてだれも話してなかった。

 日頃の行いのせいで。

 聞こえる言葉の意味が判らなくて困る、なんてコトはなかったが。

 母国語とは、違う言葉に不安が募る。

 それに。

 視界がはっきりしたと同時に、どっ、と襲って来たカラダ中の痛みに。

 改めて気が遠くなりそうだった。

「NO~~!
 No boy!」

 ともすると、勝手に目を閉じてしまうオレを見て。

 黒人の看護師が今は眠るな、と無理やり起こしにかかる。

 それが、鬱陶しかった。

 Mr.と呼ばれずに、boyと子供扱いされるのが、嫌だった。

 ただでさえ、出ねぇ声を酸素マスクに覆われていた。

 かすれる声を絞り出して、抗議の言葉を紡ぎ出そうとした時。

 声が割って入って来た。
 
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