危険な愛を抱きしめて
 それは、オレのココロからの願いでもあったのに。

 喜代美は。

 口元を着物の袖で隠して、ほほほ、と上品に笑った。

「……あら、私は、音雪さんの退院まで、ここに詰める予定ですのよ」

「なぜ!!」

「だって、私。
 音雪さんの母ですもの」

 !

 この!!

 コイツ、言い切りやがった!!!

 目の前が一瞬、カッと赤くなるほどの怒りが、身を焼いた。

 お前なんざ!

「お前なんざ、母さん、なんかじゃね……」

 オレは。

 最後まで、叫ぶことができなかった。

 突然、がくん、と胸が苦しくなった。

 手術をして、治ったはずの傷が。

 二週間たって傷の疼(うず)きもおさまって来たはずの心臓が。

 怒りに押されて、悲鳴をあげた。

 母さんは、お前よりも、百倍キレイだ!

 母さんは、千倍暖かいんだ!!



 お前なんか!!!


 お前なんざ!!!!



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