危険な愛を抱きしめて
 心のどこかでは、わかっていた。

 喜代美には、八つ当たりしているだけだって。

 喜代美は母さんなんかじゃない。

 そもそも、比べること自体が間違っている……のに。

 オレは彼女に、これ以上何を期待するんだろう?

 本来なら。

 喜代美は、オレに付いて。

 何もこんな外国にまで来る義理なんざなかったはずだった。

 オレの倒れた場所が。

 ずっと通ってたケーキ屋だと知って。

 オレのために、不慣れなキッチンでアップルパイなんざ焼く義理なんて。

 さらにもっとないはずだった……のに。



 ……オレは、ガキだ。


 どうしようもなく、わがままな、ただの子供(ガキ)だ。



 
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