危険な愛を抱きしめて
 ベッド・サイドに忘れ去られたアップルパイが、悲しい。

 ドクターたちが出て行ったあとに。

 こっそり一口、ほおばったパイは。

 風ノ塚が作るケーキと張るぐらいに、美味かった。

『……食べてほしい人の顔を、思い浮かべて作ったケーキは美味く出来る』……なんて、いまさら。

 喜代美。

 言葉に出来ない思いは、きっと。

 伝わるはずもねぇ、けれど。

 どうしても、声になんざ出せなくて。

 ココロの中で、つぶやいた。





 ……ごめん……
 
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