危険な愛を抱きしめて
「……由香里は?
 今日は、休みなのか……?」

 今の時間なら、真っ先に出会えるはずの由香里の姿が無い。

 俺の質問に、風ノ塚は、いいずらそうにクビを傾げた。

「その~~
 篠原さんは~~」

「どうしたんだ?」

 風ノ塚の様子で、何か、嫌な予感がした。

 俺のいた場所が。

 海外の、しかも病院だったから。

 この一年間は、まともに由香里とは、電話もメールも交換できなかった。

 薫に病院の住所を教えておいた関係で、時々来るのは、エアメールだったけれど。

 それには、特に。

 風ノ塚のケーキ屋の事は書かれてなかった。

 だから、俺は。

 今でも変わらず、由香里はケーキ屋でバイトをしているものだと思っていたのに。

 風ノ塚は、複雑な顔をして言った。

「篠原さんは~~
 先月で、バイトを辞めました~~
 真面目で、良い子なので残念ですが~~
 来年の進学に向けて、受験勉強をするそうです~~」




 受験勉強!

 ふ~~ん。

 由香里の成績だって、そんなに悪くなかったはずなのに。

 わざわざ勉強をするなんて、どこを受けて、将来何になるつもりなんだろう?

< 179 / 368 >

この作品をシェア

pagetop