危険な愛を抱きしめて
「……え?
由香里が、入院した……!?」
驚いて。
叫ぶように言ったオレに、薫がぱたぱたと手を振った。
「ああ、いや。
そんな大したことじゃないんだ。
ほ、ほらウチは病院だろ?
風邪……そう。
風邪をちょっとこじらせたぐらいでも、家族は、すぐ入院させるんだ。
その……色々と、面倒だから」
ケーキ屋を出て、すぐ。
由香里に、彼女の家に着くと。
いつになく、少しあわてているような薫が出てきて、言った。
その様子に、オレの眉は、自然と寄る。
「その話は、本当か……?」
「本当、本当。
一年ぶりに、わざわざ来てもらったのに悪いな」
「いや、来たいから来ただけだし。
じゃあ、風邪で入院してるってんなら、ついでに見舞いを……」
「心臓が治ったばかりのお前に、風邪をウツすわけには、行かないだろう?
また今度、遊びに来いよ」
……本当に、風邪か?
オレが、由香里に会いに来たとはっきり言ったのに。
薫はのらりくらりと、かわして絶対に由香里に合わせてくれそうにない。
その、言動がなんだか怪しい。