危険な愛を抱きしめて
「……二か月ぐらい前に、風邪をこじらせちゃってね。
 病気のコト、兄貴とおじさんにバレちゃった」


 そう言って由香里は。

 まるで、いたずらがバレれたガキみたいに、ちらっと舌を出した。

「おかげで、バイトはやめろって言われるし。
 ちょっと、風邪をひくとすぐ入院~~とか言われるし」

 もう、散々。

 なんて由香里は笑う。

「……笑いゴトじゃねぇだろう?
 でも。
 じゃあ、今入院しているのは……」

「ただの風邪。
 しかも、もう、治ったし」

 由香里に、あっさり言われて、オレは、思いきりため息をついた。

「良かっ……!
 オレは、また。
 由香里の病気が、ヒドくなったのかと……」

 オレの言葉に、由香里は、元気に笑った。

「あたし。
 日ごろから鍛えてるから、ちょっとやそっとじゃ参らないのよね」

「ああ。
 由香里だったら、病気だって裏拳一発で、KO間違いナシだよ」

 そうとも。

 きっと、な。

 いつもと変わらない元気な様子にオレも軽く笑って。

 なにげなく床頭台(しょうとうだい)を見ると。

 机の部分に参考書とノートがきちんと並んでいた。
 
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