危険な愛を抱きしめて
「……何?
 由香里は、入院中も、真面目に勉強なんかしてんのか?」

 味も素っ気もない。

 いかにも由香里の持ち物らしい、ノートを手に取って。

 何も考えずに、ぱらぱらとめくろうとすると。

 由香里は。

 真っ赤な顔をして、オレの手の中にあったノートを取り上げた。

「ヒトのノートは、勝手に見ちゃダメだってば!
 ナニも面白いコトなんて書いてないし!
 それに、あたしはね!
 優秀な雪と違って、真面目に勉強しないと、大学に入れないの!」

「大学!」

 風ノ塚に、ちらっと聞いてた受験勉強って、本当にやるのか。

 バイトを辞める口実じゃなく?

 オレは、何となく、身を乗り出して聞いた。

「ふーん。
 それで、何学部を希望するんだ?」

 オレの質問に、由香里は、一瞬、言いよどんでから、言った。

「文学部」

 ……え?

「ん、なトコ出て、将来、何をするつもりなんだよ!
 最近は、不景気で。
 ただ、大学を出たからってイイ仕事につけるとは、限んねぇってさ。
 ヒマつぶしだったら、やめておいた方がいいぜ?」

 
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