危険な愛を抱きしめて
恋(1)
すぱこーーーん
実に歯切れのいい音がして、大の男が、一人。
軽々と空に舞った。
「……まだ、あたし達にご用かしら?」
そこには、ただ。
妖精のように細く、儚げな16才の少女が立っているだけなのに。
残った、いかにもヤクザな男達が四、五人。
全員一歩後ろに下がった。
皆。
引きつった顔をして。
由香里のその、外見からかけ離れた蹴りの見事さに、全員圧倒されていたんだ。
由香里の正体を知っているはずのオレでさえ、思わず口の中で唸り。
騒ぎの元のアヤネも、呆然と拍手をした。