危険な愛を抱きしめて
 由香里は、オレの腕の中に抱きしめられたまま。

 今にも、泣きそうに笑った。

「本当に……あたし……
 なんで、雪が一番……好き、じゃないんだろ……」

 由香里は、震える手でオレの頬にそっと触った。

「こんな……キレイな……
 王子さま……なのに……
 そして……こんなに……優しい……のに」

 由香里の閉じた、目の端から。

 真珠のような涙が一つ。

 すぃ……と流れて消えた。

「……由香里……」

「あたし……本当に……
 ヤな女……よね……?
 病気の……治った……雪に。
 結局……おめでとうなんて、言えなかったし……
 ……雪じゃない……別のヒトが、好き……なんだし」

「……由香里」

「ねぇ……雪。
 あたしを……キライになって?
 他の……誰かを好きになって……
 そのコと……仲良く……しなよ……?」

「由香里」

「それに……あたし……きっと
 あまり……長生き……できな……」

「由香里!」

 頼むから……

 ……頼むから。

 そんなことを言わないでくれ!
 
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