危険な愛を抱きしめて
自分の腕の中に、愛しい人は、いた。
だけども。
そのココロは本当に遠く。
手の届かないところにあった。
「別に、お前に好きなヤツがいたって。
……オレが勝手に好きなんだし」
前にも言った覚えのある言葉を。
オレは自分の身が切り裂かれそうな気分でもう一度言った。
「弱気になるなよ。
ちゃんと治療したら、きっと元気になるぜ?
お前のことだから年を取っても。
ガッコの先生をしながら、古武術をずっと続けんだろ?
由香里が、超強ええ、戦うクソばばぁになるつもりだったら。
やっぱり嫁の貰い手はオレくらいしかいねぇよ。
こっちは、じじぃになっても待っててやるからさ……
その気になったら……オレを……見……て……?」
……ウソだった。
由香里には、オレだけを見ていてほしかった。
不安だった。
ばばぁになる、どころか。
由香里がこれからどれだけ元気でいられるか、なんて。
誰も、知りはしなかったから。