危険な愛を抱きしめて
「雪……」

 腕の中にいる由香里は。

 そんなオレのココロに追い打ちをかけるように、つぶやいた。

「だったら……雪……
 あたしと……キスとか……してみない……?」

「……?」

 なにを、莫迦な……

 と。

 由香里を見れば……

 彼女は、真剣な顔をして、オレの瞳をを見つめていた。

「雪のココロが変わらない……って言うのなら……
 あたしのココロを……変えてみせて?」

「……え?」

「オトナのキスをしたり……
 それから先のコトをすると……
 その相手のヒトを……
 好きになるって……」

「由香里……由香里……
 それは……!」

 驚き、うろたえるオレの頬に手を当てて、由香里は、微笑んだ。



 ……真珠色の涙をたくさん……たくさん、流しながら。



「あたし……あたし……
 雪のコトが好きになりたい……
 あのヒトを……全部忘れられるように……
 雪で……ココロとカラダを一杯にしたいの……!」


 だから、お願い……と泣く、由香里の言葉は。






 ……優しく、残酷な悪魔のささやき。


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