危険な愛を抱きしめて
オレのウチは、親父がやっている事業が成功してて。
並より上……って言うか。
かなり金持ちの部類に入っていた。
だから、時々『金銭感覚がずれてる』といわれるくらいのオレでさえ。
これは……ねぇんじゃねえか? って言うくらいの金額に、驚いた。
オレは、心臓の治療のために米国に送られた時。
億単位の金が、動いたコトを知っている。
だけども、由香里の治療費は。
……それと同じか、もっと多くかかるようだ。
それだけの金を費やさなくてはいけないほど……重い。
……深刻な病気、だったんだ。
しかも。
普通、こんなに深刻な病気の場合、その治療費の一部は国が負担してくれるはずなのに。
由香里の病気は。
その対象になる『難病指定』さえ取れないほど、珍しい病気だった。
由香里の家は、病院だったから。
フツーの家よりは、金銭的にも、環境的にも、マシなはずだった。
けれども、これは……この金額は。
一軒の家が出せる金額を、はるかに超えている。