危険な愛を抱きしめて
 
 オレのウチは、親父がやっている事業が成功してて。

 並より上……って言うか。

 かなり金持ちの部類に入っていた。

 だから、時々『金銭感覚がずれてる』といわれるくらいのオレでさえ。

 これは……ねぇんじゃねえか? って言うくらいの金額に、驚いた。

 オレは、心臓の治療のために米国に送られた時。

 億単位の金が、動いたコトを知っている。

 だけども、由香里の治療費は。

 ……それと同じか、もっと多くかかるようだ。

 それだけの金を費やさなくてはいけないほど……重い。

 ……深刻な病気、だったんだ。

 しかも。

 普通、こんなに深刻な病気の場合、その治療費の一部は国が負担してくれるはずなのに。

 由香里の病気は。

 その対象になる『難病指定』さえ取れないほど、珍しい病気だった。

 由香里の家は、病院だったから。

 フツーの家よりは、金銭的にも、環境的にも、マシなはずだった。

 けれども、これは……この金額は。

 一軒の家が出せる金額を、はるかに超えている。
 
< 222 / 368 >

この作品をシェア

pagetop