危険な愛を抱きしめて
 

「村崎君の申し出は、嬉しいけれども。
 ……お金は、受けとれません」

「なぜ……!」

 叫ぶように言った、オレの言葉に。

 ヤツは、目を伏せた。

「……由香里は。
 ……由香里は……
 非常に残念なことに……
 もう、先が……無いんです」

「え……?」

「援助していただけるお金に見合う効果は……もう。
 どんな手を尽くしても、得られないほど由香里の病気は、進んでいるんです。
 言ってくれた、そんな大金は。
 死にゆく由香里にではなく、村崎君自身の未来に使った方がいい」

 その。

 努力もしねぇで、あきらめ切ったような。

 由香里の叔父の言葉に、オレは、かっとなって怒鳴った。

「あんた、医者だろう!
 由香里の身内だろう!
 なのに、なんでそんなに簡単にあきらめるんだよ!」

「……出来ることなら、あきらめたくなんて、ない!
 君に言われるまでもない!」

 そう言うと、医者は、ばんっと自分の机をたたいた。

「身内なんだぞ!
 由香里がもっともっと、チビの時から。
 彼女の両親が生きているころから、ずっと知ってるんだ!
 病気が治ってほしくないわけがないじゃないか!」

 
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