危険な愛を抱きしめて
「それより、薫。
 あんたの方が……ぼろぼろじゃねぇか?
 ひげは伸びてるし。
 髪はぐちゃぐちゃだし。
 なんか全体的に薄汚れているような気がする。
 ……ちゃんと風呂に入ってるか?
 あんたは、縦横デカくて目立つから。
 キレイにしておかないと、女にもてねぇぜ?」

 オレに言われて、薫は、がしがしと頭を掻いた。

「地獄の36時間勤務を終えた新米医師に、なんか言ってんじゃねぇよ。
 風呂は、これから由香里に会ってから、ゆっくり入るんだ。
 なんなら、音雪。
 お前も、一緒に、由香里の見舞いに行くか?
 怪獣に脅されたら、俺が助けてやってもいいぞ」

「ああ、たのむぜ。
 よろしくな」

 薫と二人。

 俺たちは、げらげら、笑って肩をばしばしと叩きあった。

 まるで、先の不安を吹き飛ばそうかとするように。
 



 
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