危険な愛を抱きしめて
「今日は、看護師さんにあたしの部屋からデジカメを持って来てもらっちゃったんだ」
「また、お前は!
自分の部屋がすぐそばにあるからって、勝手に看護師を私用に使いやがって……!」
そう、薫に頭をぐりぐりなでられて、由香里はふふふ、と笑った。
「写真? 何撮るんだ?」
由香里の今いる部屋は、花一飾ってねぇ、殺風景な病室で。
窓からの風景を含めて、写真を撮って面白そうなものは、何もねぇ。
オレの質問に。
由香里は手の中にあるデジカメ構えると。
いきなり、ぱしゅっ、とオレに向かってフラッシュをたいた。
「うわ、まぶしいじゃねぇか!」
目を細めるオレに、由香里はえへへ、と笑う。
「雪の顔、も~らい」
「ん、だよそりゃ!」
「だってぇ。
雪って、写真に写るのあんまり好きじゃないでしょ?
小さいころの写真だって少ないのに。
最近、雪や、兄貴や、遊びに来てくれる友達と、プリクラ一つ、撮ってなかったな、って」
「写真くらい、いつでも撮れるじゃねぇか。
なにもここで撮らなくても……」
肩をすくめるオレに、由香里は、はじめて、さみしそうな顔をした。