危険な愛を抱きしめて
「アヤネさま!」

 洒落たスーツを着た、見るからに老齢の男が息せききってやって来た。

 そいつは、オレ達の前まで来ると。

 戦ったらそこそこヤれそうな肩を上げ下げして、ようやく息を整えた。

 よほど、慌てて来たらしい。

「お、お嬢さま。
 ご無事で………?」

「私は大丈夫よ!
 だって、音雪(おとゆき)が守ってくれたから!」

 心配そうな執事に、アヤネはご機嫌で答えた。

「それは、ようございました。
 村崎さまは、お強いので、この坂田も安心でございます。
 さすが、お嬢さまの彼氏にふさわしく、家柄も良く、賢く、ハンサムでいらっしゃる……」

「ちがう」
 
 アヤネを守ったのは、由香里だし、オレは彼氏でもねぇ。

 それに、そもそも。

 本当に賢いヤツは、喧嘩をしない。

 全部の間違いをいっぺんで解消するはずの、すばらしいセリフを、こいつらは完全に無視しやがった。

 

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